童謡の部屋

近年、街から「童謡」「唱歌」「わらべ歌」を歌う子どもたちの声が、ほとんど聞かれなくなりました。「童謡」は、日本が世界に誇る貴重な文化財のひとつです。その童謡が、親から子へ、歌い継がれることがなくなってしまったら、間違いなく童謡は衰退してしまいます。

近頃我が国では次々物騒な事件が起こり、表で安心して子どもたちを遊ばせてあげることが出来ない状況が続いています。また、子ども社会にもいじめなどの問題があり、個性を主張するより、出来るだけ目立たないようにして、いじめの対象にならないようにしようと考える子どもが多くなっていると聞きます。

おざき かよ と 童謡確かに日本は、物質的には豊かになりました。戦後の混乱期を経て、私たちの先祖は、生活を豊かにするために数々の困難を乗り越えながら、このような立派な社会を築いてくれました。生活のあらゆるシーンで機械化が進み、人々は楽をして快適な生活をすることが出来るようになりました。金融機関でお金を下ろすにも、駅の改札を通るにも、すべては機械が処理してくれるため、人と顔を見合わせて会話しなくても生活出来てしまいます。しかし、便利な反面、これでは他者を思いやる気持ちが育ちませんし、人が人として生きて行くために大切な、気配り・目配りが出来るようになりません。

物質的な豊かさを望んだり、楽をして快適な生活を手に入れたいと言う気持ちは誰にでもあります。しかし、それだけでは豊かな心は育ちません。時代は変わりました。「赤い鳥」童謡運動の頃に誕生した歌は、自然環境・生活様式・個々の価値観が変わって来たために、現代の子どもたちに理解してもらうのは難しくなっているのも事実です。近年、学校の音楽教科書からは、次々昔の良い歌が消えています。これはとても憂うべきことです。

社会や生活環境は変わりました。しかし、人間の本質は何も変わっていません。真っ白な心で生まれて来る子どもたちに、良い歌、詩、絵画、演劇などの素晴らしい芸術を与えてあげることで、豊かな人間性を持った子どもたちが育ってくれると思います。

私自身、「赤とんぼ」「七つの子」「故郷」などの名曲で心穏やかに育つことが出来たように、これからの社会を担う子どもたちに、これらの素晴らしい歌を伝えて行くことが、自らに与えられた使命だと考えています。自分を育ててくれた名曲の数々に感謝しながら、既存の歌を、歌い手として、心を込めて後世に伝えて行きたいと。そして同時に、新しい童謡も生み出すことが出来れば嬉しく思います。街のあちこちから、子どもたちが元気に童謡を歌う姿が見られるようになることを願ってやみません。